研究概要 |
研究代表者は,研究分担者ならびに他の研究協力者の緊密な協力もえて,標記研究課題とそれに関連するテーマについて研究を進め,成果を収めた. 数理モデルの典型として,非線型常微分方程式を数値的に解き,その表わしている現象をシミュレーションする必要性は,きわめて大きい.現在までに基本的なアルゴリズムのみならず,その実装にいたるまで多くの提案がなされてきた.確率的不確定性を含む現象を記述する確率微分方程式は,非線型常微分方程式の確率解析への一般化ということができるが,そこでもやはり数値的手段によるシミュレーションが重要になっており,したがってその解析が緊要となっている.本研究ではそうした方程式系に対するアルゴリズムの特性を解析し,新たなアルゴリズム設計の指針をうること,ならびにアルゴリズムの設計・実装にともなう問題点とその解決をめざしてきた.その主要なトピックスと到達点は,以下のようである。 1.確率微分方程式の数値解法に関しては,ROW型スキームの代数的構造,特にその木解析,スキームの実装,数値的安定性の基準の明確化と,M安定性,T安定性基準の評価について,それぞれ成果があった. 2.陰的Runge-Kutta法を並列計算を意識して組み直したtwo-step Runge-Kutta法を提唱し,その効率のテストを行った. 3.差分微分方程式に対する数値解法の安定性解析を行い,実用的な安定性基準を示すことができた. 4.大規模線型連立系に対する共役勾配法反復解法の解析をおこない,反復過程の残差ベクトルを,双共役勾配法(Bi-CG)の残差多項式と,それを加速する多項式との積によって生成する積型反復法の収束特性を,実験的に考察した. 上の研究主題は今後のさらなる発展が期待されるので,適切な研究計画のもとで継続されることが強く望まれる.特に,解析結果に基づく実装化がまだ十分ではないので,今後の課題として残っている.
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