研究概要 |
本研究の目的は接触負荷を受けつつ回転する粘弾性円板,例えばゴムタイヤなどに生ずる周期的偏摩耗の基本的発生メカニズムを解明することである。本研究では,非一様温度場における粘弾性円板内に生ずる応力場および温度場の解明,回転粘弾性円板の接触振動問題解明という二つのステップに分け研究を遂行するよう計画を設定した。以下に年度別の成果と今後の課題を述べる。 [1]平成6年度:回転粘弾性円板と接触負荷とを組み合わせた実験モデルを用いたシミュレーションにより,回転粘弾性円板に生ずる異常摩耗現象を実験室レベルで再現した。このシミュレーションにより,回転粘弾性円板に生ずる周期的偏摩耗現象に対して,材料の粘弾性力学挙動の影響が支配的であることがわかった。さらに,振動モデルを用いた理論・数値シミュレーションにより,接触負荷を受ける回転粘弾性円板に見られる振動現象は材料の粘弾性力学挙動の影響を顕著に受けることにより生ずることが判明した。 [2]平成7年度:非比例負荷粘弾性境界値問題に適用可能な画像処理支援光粘弾性応力解析法を新たに開発し,その有効性を確認した。さらに,粘弾性矩形平板に剛体円筒が回転接触する実験的モデルを用いて,光粘弾性応力解析を試みた。これにより回転接触近傍の粘弾性応力・ひずみの評価に成功し,同様のモデル対して従来より行われてきた理論および数値解析結果に比較してより妥当性および信頼性を有する結果を得た。ここで得られる粘弾性応力・ひずみ状態は,回転粘弾性円板内部の一点におけるそれと等価である。さらに,熱伝導解析により回転円板に生ずる粘弾性損失エネルギと温度場とを線形粘弾性理論および数値計算により評価を行った。以上により回転粘弾性円板に生ずる周期的異常摩耗現象の基本的メカニズムを掌握しえた。これらの解析結果を総合して実際の回転粘弾性円板に適用するのは今後の課題である。
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