研究概要 |
接触剛性に劣る超砥粒電着クイルの切れ刃ドレッシング/ツル-イングを行う手段として,従来の機械的方法に替わりQスイッチ発振あるいはCW発振のYAGレーザをクイル作業面の接線方向に照射することによってクイルに弾性変形をもたらすことなく砥粒突出し量の調整(ドレッシング)および切れ刃密度,形状の調整(ツル-イング)効果を得ることの可能性について実験的検討を行った.レーザ照射対象砥石としてCBNクイルおよび単結晶ダイヤモンドクイルを選定し,レーザビームとクイル作業面の干渉状態を評価するパラメータとしてレーザ近接量を導入した.その結果,以下に示す知見を得ることができた.(1)CBN砥粒,ダイヤモンド砥粒いずれの場合にも,物理的除去作用を与えることのできる発振方式はQスイッチパルスモードであり,連続発振ではその効果が得られない.(2)Qスイッチパルスを照射したときの熱損傷挙動は砥粒によって異なる.CBN砥粒の場合には劈開破壊面が生成され,ダイヤモンド砥粒の場合には黒鉛への組織変化を主体とする平坦部が形成される.(3)クイル最外周面に対するレーザビームの近接量はツル-イング効果と密接な関係を有する.例えば平均出力40Wの場合,CBNクイルのツル-イング効果はレーザスポット中心がクイル最外周面に対して40μm離れた位置で発現し,ダイヤモンドクイルの場合にはCBNクイルよりも20μmほど遠く離れた位置で現れる.(4)CBNクイル,ダイヤモンドクイルいずれの場合にも,レーザ照射によって切れ刃先端をクイル作業面状に揃えることができる.したがって,YAGレーザツル-イング後のクイルはレーザ照射を施さないクイルに比べて良好な仕上面粗さをもたらす。本方式の利点を最も発揮すると思われる総形砥石への展開が今後望まれる.
|