研究概要 |
製品に設けられた狭い孔の内面への皮膜形成が困難な溶射法の限界を克服することを目的とし,溶射と鋳造の複合加工技術を応用する実験的研究がなされた.鋳造製品の孔内面への皮膜固定法として,予めその外表面へ所望の皮膜を溶射法によって形成した中子を準備し,それを鋳型に組込み,最終段階で鋳造品から同中子を除去し,製品の孔内面に耐磨耗硬質皮膜を残留させる溶射/鋳造複合化技術が考案,検討された. 実験では先ず,高速フレーム溶射装置へ多量の燃料を液化させずに安定供給するために電子制御流量計を組込む改修を行い,以後,WC-12%Co皮膜の固定化に関し検討を行い,以下の結果を得た. 1.高速フレーム溶射法により形成されたWC-12%Co皮膜は硬度Hv900以上を有し,アルミニウム合金鋳造製品の耐磨耗化に極めて有効である. 2.レジンコーテッドサンド中子は,塑性変形能が小さいため,WC-12%Co粉末を直接溶射し成膜させることは困難であったが,予め,それにアルミニウム合金を汎用フレーム溶射により被覆処理すれば高速フレーム溶射の適用が可能となった. 3.WC-12%Co溶射皮膜と AC4B 鋳造製品とのせん断接合強度は5〜10MPa であったが,WC-12%Co皮膜へのNi-10%A1の積層溶射,鋳型の余熱温度の上昇およびNi-10%A1積層皮膜表面への凹凸加工の実施により,それは10〜20Mpaに改善された. 4.積層溶射材料として用いたZn及びCu-10%A1は接合性を向上させないこと,また,溶体化熱処理に対応して設定した真空熱処理も溶射皮膜と AC4B 鋳造部材との拡散合金化反応を生じさせるには至らず,溶射皮膜とAC4B鋳造材との接合性の改善に有効でないことが判った.
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