研究概要 |
核磁気共鳴分析(NMR)で化学シフト3.75ppm(エステル)と3.20ppm(アルコール)のピーク強度を比較することによりヒンダードエステル油に存在する微量のアルコールを定量分析する方法を開発した.この分析法の採用によって反応混合物を処理することなくそのまま分析可能になった.次にエステル油の使用環境に近い条件として酸性条件下での加水分解反応を検討した.また,実験室評価として不可欠である再現性の良い加速試験ならびに簡便なNMR分析を加味した.種々の条件を検討した結果,触媒量のパラトルエンスルホン酸を加えてアセトン-d_6(反応溶媒)中での反応が最適であることを見い出した.従来法(塩基性条件下の不均一反応)と比較すると反応の再現性が極めて高いこと,反応転化率が容易に決定できること,試験時間が短いことが改善点である. 上記の評価法によってヒンダードエステルの加水分解安定性を評価した.カルボニルの隣の炭素に置換基があるものは安定性が高い傾向が見られた.添加剤を加えずに行った四球式摩耗試験では湿度の上昇とともに摩耗率が上がる傾向が見られた.この結果から加水分解で生じる化合物が摩耗促進に関与していることが推察されたが,基油の加水分解安定性と摩耗率には明確な差は見られなかった.詳細は今後の検討課題であるが,基油に対する水の溶解度が関与していることが推察され,実用上は均一反応の条件では評価できない因子が関与していることが推察された.
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