研究概要 |
本研究では,まず浸炭焼入れ焼結金属歯車に対してショットピーニングを施し,パルセ-タ試験を行い,これらの歯車の曲げ疲労強度に及ぼすショットピーニングの影響について調べた.つぎに,イオン窒化および軟窒化処理による歯車の歯形変化を調べ,これらの強化処理による歯車のひずみについて明らかにした.また,各種硬化層厚さのイオン窒化歯車に対して曲げ疲労試験を行い,一様荷重条件下におけるこれらの歯車の曲げ疲労強度について明らかにした.さらに,種々の二段多重重複繰返し荷重条件下におけるイオン窒化歯車の曲げ疲労強度特性についてマイナ-の仮説に基づいて検討を加えた.その結果,つぎの諸点が明らかになった. 1.浸炭焼入れ焼結金属歯車にショットピーニングを施すと,表面硬さは増大するが,硬化層厚さはほとんど変わらない.また,浸炭前の炭素含有量が増加しても(C0.3〜0.5%の範囲),表面硬さはほとんど変わらないが,心部硬さが増大する. 2.焼結金属歯車の曲げ疲労限度は,ショットピーニングを施すことにより,20〜40%程度増大する. 3.イオン窒化および軟窒化処理による歯形変化は同程度でかなり小さいのに対し,浸炭焼入れの場合にはかなり大きい. 4. S45CおよびSACM645イオン窒化歯車の曲げ疲労限度は,それぞれ処理時間34, 17時間のときに最大となり,イオン窒化を施さない場合と比較してそれぞれ約40, 80%増大する.また,軟窒化歯車の場合は約30%増大する. 5.イオン窒化歯車の曲げ疲労破壊は,まず化合物層に多数の微小き裂が発生し,この中のいくつかが進展,伝ぱすることによって生じるものと考えられる.
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