研究概要 |
油圧回路の圧力調整弁として多用されるポペット弁の非線形挙動を検討し,動作点が安定であっても大きな外乱が弁に加わると弁の非線形特性の影響によって,時として不安定振動が発生し(硬発振現象),この発振現象によってポペット弁回路の発振領域が著しく拡大することを示した. この回路の局所安定性(動作点の安定性)を検討した結果,弁モードと管路モードの不安定現象があることを明らかにし,前者は前開度が比較的大きい領域で,後者は弁リフトが比較的小さい領域で不安定になることを示した. この回路に発生する硬発振現象の発生機構は,弁リフトの大きな管路モードと弁リフトの小さな管路モードの場合では全く異なることを示し,弁開きの比較的大きな場合の硬発振現象が,弁静特性の非対称性に起因することを明らかにした. さらに,この種の弁では回路圧が弁の設定圧力より低い状態では,弁が弁座に着座した状態を安定に保つが,このような場合にも大きな外乱が弁に加わるとき不安定振動が発振し得ることを示し,この領域に発生する不安定振動が,時としてカオス的挙動を示すことを数値シミュレーション法によって明らかにした.弁回路に現れるカオス挙動は,いわゆる,ファイゲンバウム型のカオスで,供給圧力の増加とともに,周期倍分岐を繰り返しカオス領域に至ることを数値シミュレーションによって明らかにした. 弁のカオス挙動の数値解析に当たって,弁と弁座の衝突は不可避である.衝突点の計算精度が計算精度全体を左右するので,その適正な処理法である最適刻み細分化法を提案し,Runge-Kutta法の計算精度を損なわずに計算を遂行することに成功した.精度の良い数値シミュレーションが出来たのはこの計算法に負う所が大きい.これも本研究の成果である.
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