研究概要 |
第一段階として、遷移期および発達した乱流状態にあるチャネル流・混合層流の直接数値シミュレーション(DNS)データ・ベースを生成した。計算にはフーリエ級数展開によるスペクトル法を、チェビシェフ多項式展開または高次精度差分法と併用した.次に、正規直交型LMB(Lemarie,Meyer and Battle)ウェーブレット基底関数によるウェーブレット変換コードを作成し、高速フーリエ変換を併用して畳み込み積分計算の高速化を図った. 第二段階では、DNSデータにウェーブレット変換を施すことにより、乱流中に局所・間欠的に存在する様々なスケールの構造の空間局所的な分離を、ウェーブレット展開係数中の各オーダーの係数の抽出・除去により行い、乱流エネルギー生成機構との相関の高い構造の解明を行った.ここでは、各方向に128の格子点を用いたDNSデータの一様な二方向に変換を施し、最小のスケール(m=1)から最大のスケール(m=7)までの分離を行った.その結果、いずれの流れ場においても、大きなスケール(m=4^〜5)のエネルギー生成に関与する秩序的な構造が、小さなスケール(m=1,2)まで自己相似的に存在することがわかった。乱流の数値解析手法の一つであるラージ・エディ・シミュレーション(LES)法では、全スケールを格子間隔以上(Grid scale,GS)とそれ以下(Sub-grid scale,SGS)に分け、粗視化した変動のモデルとしては、GSとSGS間の明確なスケールの分離を仮定した渦粘性係数モデルと、最小のGSと最大のSGSの相似性に基づいたスケール相似則モデルが用いられている.本ウェーブレット解析の結果は、LESでは渦粘性モデルの精度は低い事、また、スケール相似則モデルの精度は高く、格子間隔近傍の相似性をSGSのかなり小スケールまで拡張できる事を示した.さらに、エネルギー伝達関数のウェーブレット解析を行い、平均としてはエネルギーはGSからSGSに伝達されるものの、SGSからGSへの逆カスケードも無視できない大きさをもっている事を示した.
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