研究概要 |
吸着・脱着反応を利用して熱交換を行う吸着剤充てん層熱交換器内の熱および物質伝達の特性を明らかにし,その予測モデルを確立することを目的として,実験および物理モデルに基づく理論解析を行った. シリカゲル-A/水蒸気系の吸着剤充てん層における実験を行って,以下の成果を得た. 1.実験データに基づいて,吸着等温線を決定した。 2.吸着剤粒子径を約0.01mm, 0.1mm, 0.9mmと変化させても,吸着・脱着反応における充填層内温度分布および吸着量の時間変化の測定値にはほとんど差異はなかった。反応速度に及ぼす粒子径の影響は小さい。 3.充てん層厚さが厚くなると,厚さの比率以上に反応速度は小さくなり,吸着・脱着に要する時間は長くなる. 4.吸着剤粒子径を約0.01mm, 0.1mm, 0.9mmと変化させた場合の充てん層のみかけの熱伝導率を測定した.熱伝導率は,粒子径によらずはほぼ一定であった. 5.次に,充てん層空隙部における吸着質流体相における対流と熱伝導,吸着剤固相における拡散と熱伝導,さらに両相の境界の吸着剤粒子表面における熱伝達と物質伝達の各メカニズムを考慮した物理モデルを作成して,理論解析を行った.解析では,物理モデルに基づく吸着質の連続の式と運動量の式,および流体相と固相のエネルギー式の各式を,差分法により数値的に解いた.実験データとも比較検討して,以下の成果を得た. 1.理論解析による計算結果は,実験データの示す充てん層の温度分布や吸着量の時間変化の傾向を定性的に良く再現し,また定量的にも実験値とほぼ一致した.したっがて,本モデルにより,シリカゲル-A/水蒸気系の吸着剤充てん層における熱および物質伝達の特性を精度良く予測することができる. 2.吸着剤粒子表面における熱伝達に対する抵抗の影響は無視できるほど小さく,したがって吸着質流体相と吸着固相の温度分布はほとんど等しい. 3.吸着剤粒子内の吸着質の拡散に対する抵抗の影響はほとんど無視できる. 4.吸着剤固体相の有効熱伝導率が3倍になると,反応速度は約2倍になって平衡到達時間は約に1/2になる.したがって,吸着剤充てん層の熱および物質伝達の特性を支配する因子は,充てん層内の熱伝導であると考えられる.
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