研究概要 |
気液界面における凝縮機構の分子スケールでの解明を目的とし,分子動力学(MD)法によるアルゴン単原子分子の液面への投入シミュレーションを行った.また,蒸発分子の速度分布解析を実施し,直接シミュレーションモンテカルロ(DSMC)法に代表されるメゾスケール解析のための境界条件の検討を行った. 1.MDによる投入シミュレーション : 平成6年度に実施した液膜温度84Kにおける投入シミュレーションにより,凝縮係数が入射分子の持つ並進エネルギの界面鉛直成分の関数となり,そのエネルギ成分の増加とともに凝縮係数が大きくなることが分かった.そこで平成7年度は,温度102Kにおける凝縮係数を算出し,界面温度の影響を検討した.その結果,温度上昇とともに液面分子の運動が活発になって反射される確率が高くなり,凝縮係数が84Kの場合に比べて小さくなることが分かった.また,界面近傍での反射現象が多く観察された. 2.蒸発分子の速度分布 : 界面近傍において液面から離れる方向に向かう分子の速度分布を求め,この中で正味液体から蒸発した分子を特定した結果,全分子はMaxwellの速度分布に従うものの,蒸発分子にMaxwell分布を適用することは妥当でないとの結果を得た.すなわち,蒸発分子の界面鉛直方向速度成分が大きいほど蒸発しやすく,蒸発係数も凝縮係数と同様,鉛直方向エネルギとともに高くなることが確認された.そこで,境界条件として蒸発係数によるMaxwell分布の修正が必要であることを示した. 3.DSMC法による蒸発相の解析 : MDで得られた境界条件を用いてDSMC法による解析を行った結果,アルゴン分子の平均凝縮係数は,温度84Kにおいて約0.93,102Kにおいて約0.78となることが分かった.
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