研究概要 |
極めて強い撥水性を持つとされるフッ化黒鉛-金属複合メッキ面上での水蒸気凝縮および水滴凍結に関し,以下のように研究を実施した. 1.凝縮実験:複合メッキ面上では滴状凝縮が維持されるが,その強い撥水性から期待された凝縮液滴の落下限界径の大幅な低下とそれに伴う熱伝達率の増大は実現されないことが判明した.走査型電子顕微鏡によるメッキ面観察に基づき,次のような解釈に達した.大気中において巨視的な水液相との接触の挙動を通して認識されるメッキ面の撥水性は,表面に散在する撥水性のフッ化黒鉛粒子が気-液界面を支え,金属と水の直接の接触を妨げることによって得られている.これに対し,凝縮液滴はフッ化黒鉛粒子よりも小さい微視的寸法をもって初生し,撥水性の弱い金属マトリックスの露出部分を濡らしながら成長する.このため,凝縮器内では大気中におけるような強い“見かけ上の"撥水性は得られない. 2.着氷実験装置の製作:フッ化黒鉛-ニッケル複合メッキを施した純銅ブロックを,0℃以下に温度制御された乾燥窒素ガス雰囲気もしくは水蒸気を添加した窒素ガス雰囲気の中に置き,その表面に単一の水滴を衝突させるという実験を行うための装置を製作した. 3.着氷実験:-10℃まで冷却された乾燥窒素ガス雰囲気中では,ブロック表面のメッキの有無にかかわらず,水滴は全く凍結しなかった.水蒸気を添加した場合には銅裸面には霜層が生成し,その上に衝突した水滴は即座に凍結した.メッキ面は水蒸気添加雰囲気中でも凍結抑制効果を持つことが認められた.但し,メッキ面上での着霜状態の視認は困難で,凍結抑制効果と霜層による凝固核生成との関係は明かにできなかった.
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