研究概要 |
非定常噴霧の燃焼機構の解明は,物理的および科学的現象が数ミリ秒から数十ミリ秒の極く短時間に同時に進行するため,困難を極める.しかし,この機構を実験的にとらえれば,現象のモデル化が可能となり,この現象を利用する機器のさらなる発展が期待できる.このような観点から,本研究では非定常燃焼機構を用いる例として直噴式ディーゼル機関の燃焼室を可視化し,化学種の代表としての[OH]ラジカルをNd:YAGーザー色素レーザによるレーザ誘起蛍光法で,どうラジカルに関連するすすをNd:YAGレーザによるレーザ誘起赤熱法と弾性散乱光性で同時にとらえ,それぞれの統計的な2次元空間分布を得た.なお,非定常噴霧燃焼の化学種計測は,本研究代表者が世界で初めて実施した. 本研究の2年間の主な成果は次の通りである. (1)従来困難とされていたレーザ誘起蛍光法による非定常噴霧火炎中の[OH]ラジカルの二次元空間分布の計測が可能となった. (2)燃焼初期の予混合燃焼期間には,[OH]ラジカルが燃焼室内に広く分布する. (3)拡散燃焼期間では,[OH]ラジカルはすす存在領域において高い密度を示す. (4)レーザ誘起赤熱法および弾性散乱光法によるすす二次元空間分布は,ほぼ一致する. (5)燃焼初期には,すすは噴霧火炎外縁に連続的に存在する. (6)燃焼室壁面近傍では,燃焼の初期から終了まですすが存在する. (7)すすの再燃焼は主に拡散燃焼期間において活発である. (8)平均すす粒径は時間経過と共に単調に増加する。 (9)これらの結果は,非定常燃焼機構のモデリングのデータベースになり得る.
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