研究概要 |
単成分蒸気は凝縮過程において冷却面との濡れ性により膜状あるいは滴状のどちらかの形態に凝縮し、それら現象は詳細に明らかにされている。しかし、中低位熱エネルギーの高効率利用におけるランキンサイクルやヒートポンプサイクルの効率向上を意図した従来の有機系物質と水のような二成分混合媒体の凝縮は、液相において相互に不溶性でかつ表面張力に差があることから、水は滴状に凝縮しそのまわりを有機物が膜状に流下する膜・滴混在型の複雑な凝縮形態を呈する。また、代替フロンとして注目されるエタノール-水の混合媒体では、凝縮形態は膜状になると予想されたが、実際には擬似滴状の凝縮形態を呈する。このような膜・滴混在型の凝縮を基本とする二成分混合系の凝縮伝熱特性は、これまで、操作条件(蒸気組成・温度,冷却面温度,蒸気流速,系圧力),冷却面(形状,姿勢,寸法,配列,表面構造)および混合蒸気の種類と関連づけのもと、実機への適用を主眼に系統的に追及されてきている。しかし、膜状に流下する液膜流の干渉を伴う他成分凝縮滴の初生-成長-離脱サイクルの詳細,すなわち,液膜上に浮遊する微小滴の付着滴への捕獲効率と付着滴の成長速度,液膜流動に対する付着滴の影響、滴離脱後の液膜厚さなど未だ定量滴に一般性をもって議論されるには到っていない。 本研究は、以上の観点から、二成分混合系における膜・滴混在型の複合凝縮の現象について微視的かつ巨視的に解明することを目的に行われた。具体的には、凝縮実験装置を製作し、膜・滴混在凝縮の様相が顕微鏡を用いてVTRに観察・記録され、上記問題が定量的に解明されるためのコンピユ-タによる画像処理法が確立された。また、実験結果に基づき、これら複合凝縮現象のモデル化に関する知見が得られた。
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