研究概要 |
地下回転掘削機械の設計において,回転掘削駆動用電動機の装備トルクの最適化,掘削された土砂が取り込まれるチャンバ内での土砂の滞留および閉塞の防止は,解決すべき最重要課題である.本研究は土圧式シールド掘進機を対象とし,回転掘削抵抗の大部分を占めると考えられる,チャンバ内土砂かくはん抵抗およびかくはんに伴う土砂の流動状態を理論的かつ実験的に明らかにすることを目的としている. 理論解析には個別要素法を用いた.個別要素法は土砂のように連続体として扱えない物体の挙動解析や,土砂と機械構造体間の動的相互作用を考慮するのに適している. 実験解析には,実機のチャンバ部分の約1/10スケールモデルを設計製作し用いた.本モデルによる実験より,土砂のかくはん時に作用する全抵抗,土砂をかくはんする中間ビームやチャンバ内壁および隔壁が受ける抵抗のほか,チャンバ内土圧,土砂流動状態を測定し,解析した. まず,実験により,土砂の物性および中間ビーム回転数が土砂のかくはん抵抗および流動状態に及ぼす影響を調べるとともに,かくはん抵抗の大きさと土砂流動状態の相関関係について考察した.かくはん抵抗について,本実験の結果をかくはん抵抗の簡易算定結果と比較し,簡易算定において注意すべきことを示した.次に,スケールモデルによる実験結果から,実機におけるかくはん抵抗を推測するために,スケールモデルと実機の相似則について,実機の施工データを基に検討した.さらに,土砂かくはん抵抗および流動状態について,個別要素法による理論解析結果と実験結果を比較し,個別要素法の有用性およびその改良指針を示した. 本研究より,土圧式シールド掘進機におけるかくはん抵抗の発生機構が明らかになってきた.今後,さらに機体およびその運転条件ならびに地質条件等をさまざまに変化させた場合の検討を加えることによって,シールド掘進機を最適設計するための基礎資料になるものと考えられる.
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