研究概要 |
昨年度は、2軸加振台を用いて多次元加振を行い,頭の口部における3方向の応答を計測し,3入力3出力の伝達関数を測定し,これに基づいて動特性モデルを構築した.本年度は,測定点を増やすことにより,人体の動特性モデルの信頼性を向上させることを試みた.まず,口だけでなく額表面に軽量の加速度計を3方向に貼り付け,頭部2カ所にて,応答を測定した.さらに,胴体部の応答としては,胸部に同様に加速度計を取り付け,応答を測定した.これにより,頭部については,3方向の並進振動に加えて,ピッチ,ロールの回転振動が計測され,また,胴体部については,新たに3方向の並進振動応答が測定された.以上のように,計測点を増やすことにより,人体上体系のより精細な振動挙動が明らかになった.その主な項目を,以下に列挙する. (1)頭部の回転振動について 加振方向は,水平前後(x),左右(y),垂直(z)の3方向であるが,x,z方向間において,入出力の連成を生ずるモードが確認されていたが,この連成モードは,頭部のピッチ振動が関与していることが,実験により確かめられた.すなわち,連成のある共振周波数においては,頭部のピッチ振動も卓越していた.また,従来不明確であった,ピッチ振動の位相も伝達関数の測定により明らかになった. (2)胴体部の並進振動について 動特性モデルにおいては,頭部と胴体部をそれぞれ剛体と考え,これらを,バネ,ダッシュポットで結合して構成している.そこで,胸部の測定データを胴体部の並進振動成分とみなし,モデルを構築する際に参照した.振動モードによっては,胴体部においてもx-z方向間の連成が認められた.これは,動特性モデルでは反映されなかった点であり,今後の課題と考える. (3)動特性の入力依存性について 人体の動特性は,様々な不確定要因があり,非線形要素も存在している.本研究では,動特性モデルの適用範囲を検討するために,人体の伝達関数の入力依存法を検討した.加振波形は,ランダム波として,入力レベルを0.05〜0.35G(rms)の範囲で変化させ,得られた伝達関数の入力依存性を調べた.その結果,入力レベルが増加するとともに,伝達関数のゲインが減少するという傾向が明らかになった.
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