研究概要 |
(1)カルコゲン原子による化合物半導体安定化の機構を明かにする.(2)選択的な化学反応特性を利用して,表面/界面の物性を原子レベルで制御する.(3)隣接ダイマー(表面原子の2量体)間の相互作用が反発力である場合の相変化の機構を調べる,といった目的でS/Se処理により安定化したGaAs表面の構造を扱い以下の結果を得た. (a)As/GaAs(001)のように隣接ダイマー間の相互作用が引力の場合,ダイマーはクラスターを形成して安定化することが知られてきたが,Se/GaAsの場合は,余剰電子が反結合軌道に入ることによって,隣接ダイマーが反発力を持ち,新しい対称性を持つ構造を取ることが期待される.実際,Se/GaAs(001)表面で,2x3超構造や,結晶軸からずれた方向に軸を持つ,新しいダイマー列構造を見いだした. (b)上記2x3構造より少し高温で現れる4x1構造は,ダイマー列のペアリングという新しい表面再構成の構造を持つことを示した。2x1→4x1の構造変化,及び4x1構造でのダイマーのバックリングが表面のSe原子密度に依存すると,表面/界面の電子構造を原子レベルで制御する可能性が開かれる.実際,同手法による表面構造の制御が最近試みられ、光電子分光によって電子構造の連続的な変化が示されている. (c)2x1と2x3構造の解析から,両者間での相変化の機構を調べ、Ga2Se3構造の形成過程を明かにした.同構造の解析は,II-VI/III-Vヘテロ界面の初期成長過程の解明においても意味を持つものと思われる.
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