研究概要 |
本研究は,超高濃度にドープした半導体を常伝導層に用いて,超伝導体-半導体-超伝導体(SNS)接合を作製し,その基礎特性を明らかにすることを目的に研究を行った.その結果,以下に示す成果が得られた。 1.超高濃度ドープ半導体としてキャリア濃度1.5x10^<20>cm^<-3>のBドープZnOを用いて,三層サンドイッチ構造のSNS接合を作製した.その結果,近接効果に基づくク-パ-状のしみ出しにより,超伝導電流がZnO層を流れることが明かとなった.得られた素子の超伝導電流とノーマル抵抗の積は,超伝導エネルギーギャップにほぼ等しくなった.さらに,得られた素子の超伝導電流の温度特性からコヒーレンス長が17nmと求められた.また,ZnO層の膜厚と臨界電流からは,コヒーレンス長が37nmと求められた.理論的に見積もったコヒーレンス長は6nmであり,実験値の方が3から6倍程度長い値が得られた.この理由としては,極薄膜のZnO膜を堆積しているため,膜厚に不均一性があるものと考えられた. 2.プレーナ型の素子構造を作製するための基礎実験として,キャリア濃度3x10^<21>cm^<-3>の超高濃度PドープSi上に,狭ギャップを設けたNb電極を作製することを試みた.本研究では,プロセスの簡略化を図るため,通常の露光技術を用いて素子を作製した.その結果,オーバー露光技術とリフトオフ法を駆使することにより,マスク幅(1μm)より狭く,また光源の波長より短い0.35μmギャップを有する素子を作製することに成功した. 以上により,超高濃度半導体を用いたSNS接合を形成するための基礎技術が確立し,3端子素子を作製するための基礎的知見が得られた.
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