マンガンを含むMnBiやPtMnSbといった金属間化合物や合金が非常に大きな磁気光学効果を示すことから光磁気記録材料への応用が模索されている。しかし、磁気特性などについての実用上の問題点の解決には時間がかかりそうである。本研究では、マンガンを含む新しい光磁気記録材料を探索しようという視点にたって、貴金属とマンガンとの間の規則合金についてその薄膜化、磁気的性質、磁気光学スペクトルに関して検討を行った。その結果、MnPt_3という規則合金相が非常に大きな磁気Kerr回転角を示すことが発見された。 MnPt_3合金膜、RF2極スパッタリング装置を用いて、まずMnとPtの多層膜の構造を室温において成膜し、これを真空中でアニールすることによって規則合金膜を作製した。アニール条件を700℃、30minとすることで膜の体積の90%以上をMnPt_3の規則相とすることができた。MnPt_3膜の磁気特性は、完全な面内磁化膜で、直ちに光磁気材料に応用することは難しいが、多層構造を利用した境界異方性の助けを借りるなどの方法で垂直磁気異方性が誘導できるのではないかと考え、現在検討を進めている。 MnPt_3膜の磁気光学Kerr回転角は、波長1000nmにおいて1.2度にも達しており、この値は、1983年に発見されたPtMnSbの2.0度以来、この10年間で最も大きなものである。本研究では、この大きな回転角の起源を探るため、誘電率テンソルの対角成分および非対角成分を精密な光学測定より導出した。その結果、1000nm付近の大きな磁気光学効果は、プラズマエンハンスによるものではなく、バンド間遷移に起因していることが判明した。このことは、我々の実験結果に触発され、ドレスデン大学の理論グループが行った最近の理論計算からも裏付けられた。
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