研究概要 |
近年セキュリティシステムにおける物品の管理には高度な仕様が要求されはじめており、使用されるセンサ素子には非接触でセンサー機能を消去できる制御性が求められている。アモルファス薄帯を消磁状態に保持してキュリー温度以下で熱処理を行うと、磁壁が存在する線状の局所部分には磁壁内スピンの回転方向に沿って磁気異方性が誘導される。この局所部分では磁壁の異方性エネルギーが低化するため磁壁はピンニングされ、バルクハウゼン跳躍(BJ)特性を示すアモルファス薄帯が得られる。アモルファス薄帯は単純な磁区構造を有するため、磁区制御による特性の制御が容易である。本研究では、高周波磁界印加による磁区制御の手法により、センサ機能が制御可能なアモルファス薄帯BJ素子の開発を目指し実験を行った。結果は以下のように要約される。 1,磁区細分化 詳細な磁区観察の結果、アモルファス薄帯のBJ特性は試料端部に多数存在する残留磁区の磁壁のディピンニングにより誘起されることがわかった。この試料に60Hzの交流磁界を印加すると、試料端部の直流磁界で安定化された磁区模様が細分化してBJ特性が消失する。 2,磁壁のカイラリティー 熱処理により誘導される磁気異方性の回転方向(カイラリティー)は、熱処理の過程で存在した磁壁内スピンのカイラリティーと同一である。逆磁区生成過程でBJ素子に薄帯面に垂直に直流磁界を印加すれば、BJ機能消失することが確かめられた。この原因としては、磁壁のカイラリティーが変化して異方性誘導によるピンニングサイトにピン止めされない為だと考えられる。
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