研究概要 |
歪量子井戸は新たな性能の実現など多くの可能性を秘めた半導体構造であるが、格子不整合系で,歪を含んだ結晶系であるため,信頼性など基本的な部分で未知な要素が多い.本研究の最終的な目的は,キャリア再結合に与える端面の影響を定量的に評価することにより歪量子井戸における端面の役割に関する知見を得ようとするものである。 この目的を達成するためのステップとして,第一に,量子井戸構造におけるサブナノ領域でのキャリア寿命測定技術の確立,第二のステップとして種々の歪量子井戸サンプルに対する測定および検討(端面での欠陥発生メカニズムの理論的検討も含む)をおいて現在まで約2年間にわたって研究を進めてきた。第一ステップの課題の検討においては,歪量子井戸レーザからのピークパワー600mWという高出力短パルス光の発生技術,さらに,プラズマ効果と干渉効果とを利用した導波路構造半導体中での過剰キャリアの検出技術などの成果をもとに,これらを統合することにより,サブナノ領域での新しいキャリア測定技術の実験に見通しが得られるまでに至った.これらの検討の課程で,多くの問題に遭遇し結局これまでに実行できたのは第一のステップの検討のみであり,歪量子井戸中のキャリア寿命に関するデータの取得にまでは至ることができなかった.しかしながら本研究で検討した測定法は,導波路構造に対して適用しうる,直接的にキャリア寿命を測定できる,原理的に極めて短い寿命(可能性としてはサブピコ秒領域もありうる)の測定に適用可能であるなど多くの特徴を有しており,歪量子井戸構造での測定のみならず広い応用が期待できる。
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