研究概要 |
本研究では,光音響分光法の一つである気体マイクロフォン法の信号解析を詳細に行い,その結果を多元化合物半導体の光吸収特性と熱的特性の評価に応用した.主な内容は次の通りである. 1.板状試料における光音響信号の発生機構を,信号の発生機構理論として広く受け入れられいるRG理論にしたがって解析した.試料にはCdS単結晶を用いたが,試料厚が2mmまでは理論と良い対応を示したが,それ以上の厚さにおいては理論と一致せず,セルの大きさが関係するものと考えられる.その結果もとにCuGaS2の光吸収特性を評価し,バンド端付近の吸収特性の評価を行った.また,光学的に厚い不透明な領域でもRG理論と一致する結果が得られ,評価法としての有効性を確認した. 2.希釈方式光音響信号の発生機構の実験的解明と評価を目的として,粉末状試料の評価を行い,光音響信号が粉末試料固有の位相特性を示すことを実験的に明らかにし,粉体の光音響信号理論と良い一致を示すことを確認した.カーボンを標準試料とし,粉末状のCdSやCuGaS2の光音響信号を比較検討し,板状試料と同様に光吸収特性や熱的特性の半定量的評価が可能であることを確認した. 3.光伝導度スペクトル・光透過スペクトルと光音響スペクトルを比較することにより,TIGaSe2の光吸収特性を評価し,光音響分光法においても禁制帯幅の大きさを見積もれることを確認した.更に,この物質の不定形試料について光吸収特性の評価を行った.
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