従来、弾性表面波デバイスの波動論的理論解析では金属薄膜の導波・屈折効果が無視されていた。本研究担当者は、それらの効果を考慮した新解析法を提案した。本研究は、新解析法の妥当性及び適用限界を明確にすることを目的としている。このため、弾性表面波ビーム圧縮用薄膜ホーンとトランスバーサル形フィルタを例にとり、数値計算と実験により検討する計画をたてた。以下に得られた成果の概略を述べる。 1.ビーム圧縮用薄膜ホーン まず、ビーム幅を15波長から3波長に圧縮するパラボリックテイパ-形とリニアテイパ-形ホーンのパワー伝達効率を数値計算により検討した。その結果、パラボリック形ホーンの最適ホーン長は、従来の光線モデルにより求まる長さより大幅に短くなることが示された。例えば、YX L iNbO_3基板を用いる場合、新解析法により求まる長さは130波長てせあり、光線モデルによる長さは220波長である。リニア形ホーンの場合、損失が-0.5dB以下になるホーン長は数100波長と長くなる。一般に、最適ホーン長は、基板の電気機械結合係数が小さいほど、また咲く度異方性係数が-1に近づくほど長くなる。次に、送・受波用すだれ状電極間に3波長幅導波路の両端にホーンを接続した形状の薄膜を設けたデバイスを試作し、挿入損のホーン長依存性を測定した。測定結果と理論計算結果の差は2dB以内とよく一致し、本研究の解析法がホーンの設計に有用であることが確認された。 2.トランスバーサル形フィルタ フィルタ電極形状を設計し、電極形成用精密ホトマスクをメーカに発注するにとどまった。今後、研究を続け、周波数特性を理論と実験により比較検討し、フィルタの精密な設計への新解析法の有用性を検討していく。
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