研究概要 |
本研究は,多元接続数が多くとれる実数直交擬似雑音系列による準同期式スペクトル拡散方式の室内無線LANへの適用性を研究し,室内無線LANに1つの選択肢を与えることを目的として,平成6年度から平成7年度まで行われた。本方式では,一定の遅延範囲で各局が無干渉で交信できるように,異なる系列で直交する周期的実数擬似雑音系列とシフト直交する有限長実数擬似雑音系列を組み合わせて符号を構成し,室内での光空間多元接続の実験を行って,基本的性質を明らかにした。 結果として,振幅変調による狭帯域拡散および広帯域拡散の準同期式スペクトル拡散光空間無線LANの多重伝送において,多局間干渉およびデータ変調による符号間干渉はほぼ理論通りの低い値に抑えられた。本研究ではディジタル相関器の構成についても検討しており,今後ASICを使った本方式の実現が期待される。以下に研究成果を要約する。 (1)室内無線LANにおけるマルチパスの見積りと把握 室内の柱や壁が電波伝搬に与える影響をシミュレーションによって見積ると共に,室内の蛍光灯照明下での0.8μ帯のレーザ光をスペクトル拡散変調し,壁や天井による反射伝送が可能なことを確認した。 (2)多元接続のための符号の構成 異なる系列が直交する実数擬似雑音系列にシフト分に対応する0値を挿入し,データ変調後にシフト直交する有限長実数擬似雑音系列をたたみ込んで,局間干渉と符号間干渉を抑える符号を構成した。 (3)準同期多元接続の性能解析 ディジタル信号処理の誤差,雑音の相関出力への影響を解析した。 (4)室内無線LANの評価実験 ±1チップのシフトを許容し,128局の交信が可能なスペクトル拡散光空間伝送を行い,希望信号対不要信号の改善率44dBを得た。
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