研究概要 |
本研究においては,凸解析に基づくシステム最適化手法の理論基盤を確立するとともに,現在身近に利用可能となりつつある並列計算機を用いることを念頭におき,問題の構造を有効に利用した高度の並列化が可能な新しいアルゴリズムの開発を行い,以下の成果を得た. 1.凸計画問題に対する交互方向乗数法を提案するとともに,それを輸送問題や多品種流問題などさまざまな問題に適用し,並列計算機上での数値実験により,その有効性を確かめた.さらに,交互方向乗数法をより一般的な変分不等式問題に拡張し,提案した方法が交通流均衡問題に有効に適用できることを示した. 2.凸計画問題に対する近接点法を適用するいわゆる主双対近接点法を考案し,その新しい実行方法を提案した.さらに,変分不等式問題に対する主双対近接点法を提案し,さらにそれがある種の分離可能構造をもつ問題に対しては効率的な並列アルゴリズムとなることを示した. 3.一般の凸計画問題に対して,信頼領域法の考え方を導入することにより,降下法の性質をもつ近接点法の並列アルゴリズムを提案した 4.2次計画問題とその拡張である線形相補性問題に対する並列アルゴリズムを提案し,それらのアルゴリズムの理論的な収束性を明らかにするとともに,計算機実験によりそれらの実際面での有効性を確認した. 5.変分不等式および非線形相補性問題に対する最適化アプローチに関するいくつかの基礎的な結果を得た.得られた結果はそれらの問題に対する効率的なアルゴリズムを構築する際に,重要な役割を果たすことが期待される.
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