計測・制御光学の分野においては、水道・ガスの配管系における管の長さ計測を始めとして、長さの直接計測が困難な場合が非常に多い。この観点から本研究課題は、まず平成6年度、海上空港建設の際の軟弱地盤改良工事における鋼管内砂面沈下距離計測を取り上げた。この問題は、結局は両端が閉じた鋼管の長さ計測に帰着されるが、工事に際し管内空気の加圧、減圧が繰り返されるため管内に多量の水蒸気が発生し、光波による砂面までの距離計測が困難となる。そこで本研究では、まず管内に音響エネルギーが伝播した場合、管の長さに応じた定在波が速やかに生じることを念頭に、管内音圧変動を適切なダイナミクスモデルで表現した。そして、管端に設置した音響センサによる音圧観測方程式と組み合わせて、これらにカルマンフィルタを適用する「管の長さオンライン自動計測システム」を研究・開発した。これにより、0.3秒程度の音圧データで0〜0.5%の高精度なオンライン長さ計測が行われることとなった。 次に、平成7年度は、石油パイプラインや原子力発電プラント等を始めとする数多くの配管系における、腐食などによる穴あき箇所の検出や管内に詰まった異常物体の位置決定などを行う「管のオンライン異常モニタリングシステム」の研究・開発を行った。このため、鋼管内に音響信号を入力し、得られる反射波を解析することにより配管の形状計測ができるようにし、結果として正常時からの差異をみることにより異常が認識・検知できるようにしたものである。そのための基礎的なツールとして、送波器、受波器の入出力特性を解析し反射波モデルを作成することにより、受波器に得られる重畳した多くの反射波が互いに高精度に分離・識別できるような方式を開発・採用した。これらの一連の研究成果は、学会誌論文及び著書として広く公表して来た。
|