研究概要 |
原子炉蒸気発生管の疲労劣化診断の磁気的手法を確立するため、その一貫としてバルクハウゼン法を検討した。この研究は交番、回転双方の励磁磁界によるバルクハウゼンノイズの特徴を基に、回転磁界の有用性を明らかにし、原子炉材料であるインコネル600の平板試験片にバルクハウゼン法を適応した。その結果インコネル600の劣化に伴う変化をバルクハウゼン法で捕らえることができることが確認された。本研究で得られた結果を以下に要約する。 (1)磁性体に回転磁界を加えることにより連続なバルクハウゼンノイズが発生可能であり,交番磁界下の場合と比較して多くの情報が得られることを示した。 (2)インコネル600平板試験片に独自の励磁装置により回転磁界を発生させた。その結果、疲労の進展に伴いバルクハウゼンノイズのPower値(大きさの指標)も増加することを明らかにした。これにより,疲労劣化診断にバルクハウゼンノイズを利用できることを示した。 (3)上記の結果を用いて,疲労限界応力の推定を行った。その結果,限界繰返し応力は25kgf/mm^2(疲労繰返し数比=0.1n/Nf)であり,実際必要な15kgf/mm^2には至っていない。このため,BHNセンサーの感度あるいは励磁条件の向上が必要である。 今後,蒸気発生管と同形の試験片に実際の疲労状態に近い条件で、面圧と繰り返し疲労を加え各疲労段階の試料を測定する予定である。
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