研究概要 |
コンクリートなどの岩質材料内部の巨視的クラックの先端近傍の破壊進行領域は,多くの微視的クラックを含むmicrocracking zoneと粗骨材などによる結合力の残っているbridging zoneから構成されていると認識されているが,これらの長さ,幅,形状などは明らかにされていない。このような状況を考慮し、AE事象率を基礎として載荷速度を制御する方法(AE事象率載荷法)を用い,最大骨材粒径15及び5mmのコンクリートとモルタル供試体の3点曲げ試験を行い、3次元位置標定によってmicrocracking zoneの同定を行い,これらの供試体のmicrocracking zoneの平均長さは,それぞれ51,61mm,また,その幅はそれぞれ71,57mmであった。更に,実験中に染料を浸透させることにより,bridging zoneの長さを計測した結果,上記の供試体のbridging zoneの長さは,それぞれ54,31mmであった。この結果として,供試体内で完全に分離して巨視的クラックになった位置とAE発生源の先端との間の距離としての破壊進行領域は,コンクリート及びモルタル供試体で,それぞれ105mmと92mmであることが明らかになった。AE波形解析により,コンクリート及びモルタル供試体の3点曲試験中に生じる微視的クラック面の方向分布があきらかになった。 また,AE波形解析から求められた微視的破壊面の方向分布を基礎として,異方性を考慮した連続損傷理論を定式化し,この理論と有限要素法を用いて破壊進行領域の数値解析モデルを構成し,コンクリート供試体の3点曲げ試験の数値解析を行い,実験結果との比較を行った。破壊進行領域の広がりは,実験結果と良く対応しているが,荷重一変位関係は,数値計算結果の方がしなり小さな値であり,今後,改善を必要とされる。
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