研究概要 |
1.解析方法の開発 従来より開発を進めてきたALE有限要素法による構造・流体連成解析法に,乱流モデルとしてLESの標準的なモデルであるSmagorinskyの渦粘性モデルを導入して,風洞実験レベルの高レイノルズ数流れの解析ができるようにした. 2.検証実験の実施 解析法を検証することを目的として,円柱の渦励振の風洞実験を行った.構造減衰を低く抑えるために円柱をエアーベアリングで支持し,二本のコイルバネで復元力をとった.円柱とバネ系の固有振動すと円柱からの渦放出周波数とが近接する風速領域で円柱の振動振幅が大きくなる自由振動実験を行った.円柱変位や周辺風速の時刻歴の測定のほかに,円柱表面の変動圧力分布とその時間変化の多点同時測定も行った.スクルートン数が40と11の2ケースの実験を行った. 3.解析結果 解析は実験で設定した諸パラメータをそのまま用い,振動する円柱周辺の有限要素が円柱変位とともに変形するような有限要素モデルによって行った.スクルートン数が40の比較的重い円柱の場合,解析では円柱が渦励振を生じる風速の実験値をほぼ予測できた.また,最大振幅の値,および円柱表面の圧力分布も,実験と比較して妥当なものであった.しかしこの条件では円柱の最大振幅が直径の5%程度と小さかったため,渦放出周波数が固有振動数に一致する「ロックイン」現象を十分には捉え切れなかった.これに対して,スクルートン数が11の比較的軽い円柱の場合には,最大振幅が直径の10%を越えるような大きなものとなり,「ロックイン」を捉えることができ、本研究の解析法が流れと物体運動との相関した現象を表現できていることが実証できた. 今後の課題は物体周辺の流れの3次元性を考慮することにあり,振幅が大きくなるに連れて円柱周辺の流れがより2次元的になっていく影響をモデル化して導入することにより,より実験に近い予測を行えるようにすることである.
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