研究概要 |
近年,河川整備は治水・利水・環境のいずれの機能も等しく向上させるという理念で行なわれるようになりつつある.すなわち多機能水路が目指されるが,それぞれの機能が充分発揮できるように水流を的確に制御する技術の開発・確立が望まれている.本研究ではとくに斜め桟粗度によるら旋流制御と植生帯を利用した横断混合促進を中心に多機能水路設計に必要な現象理解と記述・予測をめざし,室内実験,野外計測,数値解析の3つのアプローチを採用した. 斜め桟は底面あるいは側岸に設置されるが,適当な間隔で設置された場合,流下方向に均質な乱流が形成される.桟が斜めに配置されることにより,抗力に横断方向あるいは鉛直方向成分が出現し,これが2次流を駆動する.抵力とそれによるエネルギー損失を局所的に平均化した力と乱れエネルギー生成として取り込んだ数値解析で現象を記述できることを計測結果と比較して示し,桟の配置と流れの関係を予測できるようにした.底面・側岸の斜め桟はストリーム型魚道の阻流板に相当し,魚道の設計への応用も示した.魚道はストリーム型にかかわらず典型的な機能型水路で,従来のその設計は経験式や模型実験に頼っていた.ここでは各種ストリーム型魚道,バ-ティカルスロット魚道について数値解析法を提案し,これによって標準型でない魚道も容易に工夫・設計できるようにした. 一方,植生帯は横断混合を促進し,主流部の濁質を植生帯に引き込んで,主流の清浄化に役立つ.こうした効果を利用するため水路に植生帯を配置することを考えると,植生帯流入部から従来よく知られた植生帯を伴う平衡流れ場までの遷移距離の推定やその過程での流れの変化や浮遊砂の挙動を知る必要があり,室内実験・野外実験・数値解析を行なってそれらを調べた.
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