研究概要 |
運輸省港湾技術研究所波崎海洋観測施設において観測した暴風波浪下の海底地盤砂層内の(1)有効土かぶり圧変動,(2)海面変動,(3)岸沖方向および沿岸方向の流速変動,(4)浮遊砂濃度に基づき,波浪による砂層の流動化と底質移動の関連について検討を行なってきた.その結果,砕波帯内と砕波帯外とでは砂層の流動化のメカニズムが異なることが確認された.それによれば,砕波帯外では波形勾配の大きな高波高の波の通過により砂層中の間隙水圧が上昇し砂層表面における波圧変動と間隙水圧変動との位相差により有効応力が減少し砂層が流動化する.それに対して砕波帯内では動間隙水圧が波の砕波により急激に増加し,その結果有効応力が急激に減少することにより砂層が流動化する.この動間隙水圧変動は個々の波の通過により変動以外にも1日周期でほぼ低潮位時に大きくなることや地下水変動とも相関が認められた.最も影響を及ぼす因子としては砕波によるものが考えられ,個々の波について砕波の影響を吟味した.水面波形の非線形性については,歪度・先鋭度について求め,長周期波成分についてはスペクトルによる分離により周期30秒以上の波高及び周期について求めた.その結果によれば,動間隙水圧の平均値の時間変動に対する非線形性や長周期波成分の変動の相関は小さく影響が少ないことが確認された.また,有効土圧と地形変化との関連については,運輸省による定時観測結果と有効土圧変動から推定される海底面の変化との比較を行った.その結果によれば,地形変化は従来思われていたよりも短時間に生じており,定時観測結果は提案した土圧変動に基づく推定値に合致しているが,堆積と浸食の傾向は定時観測結果から推定されるものとは異なる場合があることが認められた.今回の結果に基づけば,堆積と浸食の過程について検討を行う場合には有効土圧変動に基づく動的観測が有効と考えられる.
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