研究概要 |
高度交通情報システム(Inteligent Transport Systems,ITS)により交通情報が提供された際に,それがドライバーの交通選択行動やネットワーク交通流に及ぼす影響を把握するために,既に多くの都市で導入されている駐車場案内・誘導システム(Parking Guidance and Information System,PGI System)を例に実証分析とシミュレーション分析の両面から検討を加えた. 松山市の駐車場案内システムの利用者に対して,駐車場および駐車場情報の利用実態を把握するとともに,駐車場案内システムに対する評価を知るために実施した3回のアンケート調査の結果を分析した.駐車場選択に関するSP調査のデータを分析した結果によれば,満空情報,空き台数情報,待ち時間情報はいずれも徒歩距離や駐車料金と同程度かそれ以上に駐車場選択行動に対する説明力が強く,情報の持つ潜在的価値は十分に高いことがわがった. 異なった種類の情報の種類による差異を調べることと,道路ネットワーク全体に渡ってのシステム効果を計測することを目的に,道路ネットワークに駐車場を組み込んだシミュレーションモデルを開発した.モデルは「駐車場を含む動的配分シミュレーションモデル」の特徴を持っており,3つのサブモデル(需要モデル,パフォーマンスモデル,情報提供モデル)から構成される.数値計算の結果明らかになったことは以下の点である.(1)駐車場情報が提供されると駐車需要が空間的に分散し,ネットワーク全体として混雑緩和が見込まれる.(2)情報を持つドライバーの割合が全体の50%程度までは,情報提供による時間節約効果は単調に増大するが,多くのドライバーが情報を持ってもそれに見合う新たな効果の増分は期待できない.(3)情報の種類により提供効果の程度が異なる.混雑が少ないうちは空き台数情報や満空情報が有効であるが,混雑水準が増大するとこれらの情報の価値は低下し,代わって待ち時間情報が有効な情報となる.
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