研究概要 |
重ね継手の付着強度は,既往の実験式をもとに一方の継手の主筋を存在を無視し,主筋本数を継手組数と置き換えて算出される。しかし,既往の付着割裂式は,重ね継手における特有の応力状態を想定していないので,重ね継手の付着割裂強度における全割裂幅や,重ね継手間に生じるコンクリートのせん断応力に対する横補強筋の拘束効果など不明な点も多い。本研究は,重ね継手を材端に有する梁の靭性に及ぼす,重ね継手主筋の配置と横補強筋のかかり方影響について調べるための実験を行なった。試験体は,柱側定着主筋と横補強筋の関係を調べる,即ち柱側主筋を梁定着主筋より外側に配し,直接横補強筋で拘束した2体と,逆に,梁側主筋を柱定着主筋より外側に配し,柱側主筋に対する横補強筋の拘束を間接的にした2体,及び曲げ降伏を先行させて靭性を調べる4体である。実験は,曲げせん断力を受ける梁の実験とした。実験の結果次のことが明らかとなった。 1)応力の大きな柱定着主筋を横補強筋で拘束した重ね継手を有する梁の耐力は,柱主筋を梁定着主筋の内側に配し横補強筋による拘束が間接的になっている梁に対し,かなり高い。せん断補強筋の効果としては約2倍の効果が見られた。 2)横補強筋量を2倍にしたときの耐力上昇に及ぼす効果は,約15%であった。 3)重ね継手長さが,主筋径の40倍であれば,継手のない梁の変形能力と同等の性能を示した。 4)最大耐力時の梁主筋のひずみは,単純引張試験のときの場合に比べてやや小さい,これは,曲げせん断実験の場合,かぶりコンクリートの剥落が,生じやすくなるためと考えられる。
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