研究概要 |
本研究では、平成6,7年度の2年間にわたって、不確実性の高い外乱と多目的,多機能性等の建築構造物の有する固有の特性を考慮することができるアクティブ制御システムの構築に関して、ディジタルシミュレーションによる基礎的な研究を実施した。本研究では、建築構造物の最適適応予測制御システムの構築を目標とした。まず、予測制御では、地震動入力予測に条件付きファジィ集合,ニューラルネットワークを用いた予測システムを、過去に観測された地震動加速度データを用いて構築した。適応制御では、区分線形応答方程式,ニューラルネットワークを用いた構造同定システムを構築した。また、ニューラルネットワークの学習用データをシステマティクに作成するために、遺伝的アルゴリズムを用いたシステムの構築も併せて行った。最適制御では、多目的最適化問題に対応できるファジィ最大化決定を用いた。これらのシステムを用いて、頂部にアクティブマスドライバー(AMD)を設置した1,2,5質点せん断型構造物とに対するアクティブ制御システムを構築し、ディジタルシミュレーションを実施した。その際、目的関数として構造物の応答変位を、制約条件としてアクチュエータのストロークと制御力を、ファジィ理論の帰属度関数を用いて設定した。ディジタルシミュレーションの結果より、構築したアクティブ制御システムは、設定した帰属度関数に応じた制御を実現できること、これらのシステムで用いている予測,同定手法は、定量的には若干の差が見られるが定性的には性状を予測,同定できることが明らかとなった。また、AMDの設計に関してもファジィシステムを用いた設計システムの検討を行い、良好な結果が得られた。今後は、より実際的なシステムの構築を目指して、制御系の設計からディジタルシミュレーションシステムまで一貫して行える総合的なシステムの構築や実験的研究を行っていく必要がある。
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