研究概要 |
本研究では暑中環境下で打設されるコンクリート表層部に打設後かなり早い時期に生じるひび割れの発生要因として部材深さ方向の温度性状および表層部における脱水症状に着目し,ひび割れの防止対策方法を確立することを目的として実験および解析による検討を行った. 先ず温度ひび割れ発生要因に関する基礎的実験として,打設後24時間程度までのスラブ試験体の温度性状および脱水性状に関して実験を行い,外気温度等の外的要因,調合・材料等の内的要因が温度性状および脱水症状に及ぼす影響を定量的に評価した. 次に温度ひび割れ対策のフローチャート,およびフローチャトで行う温度ひずみ解析方法を示した.また解析で必要となる脱水速度算定式を提案し,更に温度解析により得られた温度データから表層部に生じる引張りひずみを算定する際に必要となる若材齢時線膨張係数や,ひび割れ発生判定の基準となる引張り限界ひずみを測定した. これらの結果をもとに表層に生じる引張りひずみを解析した結果,本件級で検討対象としたスラブ試験体の場合,引張りひすみは,引張り限界ひずみが極小値を示す時期とほぼ同時期に極大値を示すこと,従ってコンクリートスラブにおいてはこの時期に表層部と中心部の温度差に起因するひび割れが生じやすいことが明らかになった.また温度ひび割れ発生に及ぼす環要因や調合要因の影響の大小を定量的に明らかにした.最後に温度ひび割れ対策として養成の影響を検討した結果、養成開始直後から表層に生じる引張ひずみが減少し、温度ひび割れ防止に関して非常に有効であることが定量的に示された.またこの場合養成開始時期が重要であり,引張り限界ひずみが極小値を示す前に養成を開始する必要があることが明らかになった.
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