研究概要 |
本研究は地震地体構造を反映した地震ハザード解析と部材強度分布から推定した建築物の耐力の分布特性に基づいて建築物の耐震安全性を評価するものである. 萩原の提案する地震体構造に基づいて日本付近を28の大区域からなる面震源モデルに区域分けし,100年間の宇津と気象庁のカタログを用い,地震カタログの精度の異なる3つの期間での地震活動度が定常的となるように補正を行い,大区域のb値,最大マグニチュードを推定した.また,地震発生の地域差が十分反映できるように大区域の中を1度角程度の小区域の面震源モデルに分割して地震危険度解析を行った. このモデルによる解析結果と比較するために,全国約90地点の気象台の40年間の年年最大変位の極値分布と20地点の約25年間の年最大加速度の極値分布を求め,比較を行った.変位の場合は解析分布と観測分布が多くの地点で良く対応する結果が得られたが,加速度の場合は減衰曲線によってはかなり異なる結果が得られた.検討の結果,加速度の減衰曲線には一般に近距離の規模の大きい地震に対応していないことが明かとなった. 建築物の耐力の分布特性についてはRC造の壁量や耐震診断に基づいた分布が得られている程度で非常に少ないので比較的資料の多い部材の強度分布から塑性ヒンジ法を利用したシミュレーションによって骨組の耐力分布を推定することにした.現在までに解析したのは簡単な門型ラーメンの場合であるが建物の耐力のばらつきは種々の崩壊系が含まれたとしても部材の耐力のばらつきより少し大きい程度という結果が得られた. 本研究から得られた問題点としては,一般に地体構造区分は大きな断層系で分割されているが,危険度解析では大きな断層系は分割しない方が適切と考えられるので両者の違いについては検討する必要がある.また、建物の強度分布については多層ラーメンを含む多くのモデルを解いて一般的な傾向を把握する必要があろう.
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