研究概要 |
1.【温度応力による外壁仕上げ材の剥離に関する力学的検討】仕上げ材のモルタル(板と仮定)が躯体コンクリトから一部剥離している場合、外壁表面が日射を受けることにより生じる板厚方向の温度勾配や、板と躯体コンクリート間の温度差によって生じる温度応力を想定し、その応力によるモルタル板の座屈並びに両部材間の剥離の伸展の可能性を弾性板理論に基ずき検討した結果、以下のことが明かとなった。(1)モルタル板の一部が剥離している場合、温度応力により板が座屈する可能性がある。(2)剥離部分が長方形の場合、躯体コンクリートとモルタル板の温度差tとL/h(L:剥離部分の短辺長、h:板厚)の関係は次式で表わされる。 (L/h)^2=(K・π^2)/(12(1-ν^2))・1/(α・t)・(1+(L^2)/(b^2)) ただし、K:周辺の支持条件に依存する座屈係数,ν:ポアソン比,α:線膨張係数,b:剥離部分の長辺長さ (3)座屈が生じる温度差以上の温度差が躯体コンクリートとモルタル板間にあると両部材間の隙間が増大する。 (4)モルタル板の一部に剥離が存在すると周辺の付着健全部の接着面に垂直な応力によって剥離が伸展する。 2.【赤外線カメラよる剥離診断の検討】60×70cm角の壁面中央部に30cm角の1,2mmの浮きを有する仕上げモルタル塗り厚40,50,60mmの6試験壁体を用いて、季節(秋・冬・夏)と壁面方位(東・西・南)について太陽光を熱源とした赤外線カメラによる画像、壁面温度と気温分布のデータを収集し、それを基に剥離判別が可能なモルタル塗り厚の限界とその時間帯を検討した結果、以下のことが明かとなった。(1)モルタル塗り厚の限界は60mm、(2)測定に最も適した季節は太陽高度並びに壁面日射量の関係から秋季が最適である。(3)夏季診断の場合、壁面が日照を受けてからの気温変動が5℃以上でなければ剥離診断は不可能である。
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