研究概要 |
これまでの熱・湿気移動の研究において検討されていなかった材料内局所の湿気移動に関して、局所非平衡性表現する「局所湿気伝達係数」を理論的に定義し、精密湿度発生装置を用いた材料の吸放湿実験及び数値シミュレーションを行った。その結果、以下のような知見を得た。 1.精密湿度発生装置を用いて,杉木口薄板を対象とした吸湿ステップ変動実験を行い,材料内部の湿度変動および吸湿量変動測定結果から局所湿気伝達係数を算定した。 2.局所湿気伝達係数の温度依存性を実験的に検討したところ、顕著な影響は認められなかった。また、相対湿度に対する依存性については、湿度が高くなるほどその値は小さくなる傾向が認められた。 3.多孔質材料の平衡含湿量曲線の定式化の方法を提案した。杉木口板,硅酸カルシウム板,ALC板に対する実験結果から平衡含湿量曲線の実験式を提案し、それに基づいて湿気容量の非線型性を検討した。 4.局所非平衡性を表現する湿気伝達係数を用いた熱・湿気同時移動方程式を提案し,杉木口薄板の吸湿量のシミュレーションを行った結果,実験地とほぼ一致した。従来の局所平衡に基づく計算では実験値と異なる傾向を示した。よって、局所非平衡仮定に基づいた本研究の有効性が確認された。 美術館等の収蔵庫のように吸放湿材料を用いた空間を想定し、局所平衡および局所非平衡それぞれに基づく室内温湿度シミュレーションを行って、温湿度の変動、吸放湿量の変動の違いについて検討した。
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