研究概要 |
建築空間を個々に分析するのではなく,建築の集合について,そこに普遍的にみられる空間構造を把握するために,スキーマグラマ-という概念を提案した。すなわち,空間構成を規定している規則性をスキーマルールとして捉え,空間構成の隠れた構造を明らかにすることを試みる。 最初にこうした方法論を整備するとともに,日本と中国の古代都市の平面についてスキーマグラマ-を構築し,方法論の有効性を確認した。 日本の伝統的空間である町家について87の平面を収集し,スキーマグラマ-を構築した。このグラマ-より,73の町家平面が導出可能であることを確認した。スキーマルールの適用状況を調べると,時代が下がるにしたがって,町家奥部分の座敷や離れの多様化,充実化が判明した。 草庵風茶室と呼ばれる小間の57の茶室について,スキーマグラマ-を構築した。その結果,亭主と客との対峙を表すイニシャルスキーマから茶室空間が導出されること,また,床からにじり口への方向性を出現させるスキーマルールがあること,スキーマグラマ-を介して,武家茶人による茶室平面に多い逆勝手となる平面は,開口との関係で,開口を大きくとるために出現したと解することができることなどを明らかにした。 民家平面を分析するため,新たにSALと呼ぶ空間記述言語を開発し,コンピュータにより自動的にスキーマグラマ-を構築する方法を提案した。これを用いて,113の東北民家平面よりスキーマグラマ-を構築し,各地域別のスキーマルールの適用の違いから地域的特性を把握できることを示した。
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