研究概要 |
本研究では商業地,住宅地といった都市的用途地のみならず,農地,林地といった非都市的用途地を含む地価動向を定点データをもとに把握し,その変動要因を明らかにした.さらに,この知見をもとに地価変動の短期予測に関する考察を行っている.具体的な内容は以下の通りである. 1.公示地価データおよび収集した取引事例データもとにクロスセクション地価関数を推定し,仮想地点属性値を代入することにより,時系列の地価データを整備した.その結果,従来の研究では扱われていなかった定点の地価データを用いた時系列分析が可能となった.また,定点地価データから地価動向の類似する地域内においても価格水準や土地利用規制によって地価動向格差が生じていることが明らかとなった. 2.1.の定点地価データを用いて地域間の波及現象を明示的に表現できるネットワーク自己相関モデルを適用した地価動向モデルを構築した.その結果,1980年代後半の地価高騰期には波及の影響が統計的に有意であることが明らかとなった.また,波及による地価高騰は非都市的用途にまで影響していることを明らかにした. 3.1.および平成6年度に作成した地価データをもとに短期予測可能な地価変動予測の方法に関する検討を行った.具体的には地図情報,交通ネットワーク等の変化による地点属性要因,経済成長および将来の予想地価の変化等の社会経済要因,土地税制,監視区域制度,総量規制等の制度的要因を含む地価変動指数による短期地価予測法の提案を行った.本研究で提案した予測指数は従来の予測指数と比較して,予測精度が高く,また,市場価格を対象としている点,地点ベースでの予測が可能な点,地点属性の変化と社会経済変動による変化を明確に分離して把握できる点などからより有効な予測方法であることを示している.
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