研究実施計画に沿って、本年度の研究実績の概要を以下にまとめる。 1)トランセプトの類型が不明のもの約1200例については、文献ならびに資料の検索と収集によって、このうちの840例の類型を特定することができた。また、内陣の類型が不明のもの約500例については、同様に350例の類型を特定することができた。 2)現有資料で年代と規模が特定できていなかった約600例については、あらたに収集した文献によって、そのうちの約7割の特定が可能となった。 3)教会堂の地理上の位置は、2000例のうちの約7.5割について特定することができた。ただし、本年度は、これらの位置を座標値(経度、緯度)として表記するまでには至らなかった。 4)データベースの作成は、約560例の基本データをコンピュータに入力したにとどまった。 5)西欧の地理情報をコンピュータに入力して白地図を作成するまでには至らなかった。 6)したがって、入力データをもとにして、白地図上で各種のシュミレーションをおこなうことはできなかった。 7)しかし、トランセプトの類型が特定できた1640例と内陣の特定ができた1850例(両方の特定ができたもの1780例)を地形図上にプロットしたところ、西欧をトランセプトの発達段階に応じて5つの地域に区分することができた。とくにイール・ド・フランス周辺の状況を、より正確に把握することができた。これによって、イール・ド・フランスを、トランセプトの発達の遅れたロ-ヌ河流域とライン河流域に準ずる地域として、位置づけることができた。
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