研究概要 |
初年度に作製した微小領域電気特性測定装置に温度制御システムを組込み,セラミックス微小粒界の電気特性を測定した.試料は焼結体のほかに単結晶を用いて作製した人工粒界も用いた. 1.人工粒界試料の作成 FZ法で育成したSrTiO_3単結晶の育成中に生成する粒界を1つだけ含む(単粒界)試料や単結晶を機械的に接合した人工粒界(接合粒界)試料を作成した. 2.FZ単結晶人工粒界の酸化還元処理 単粒界試料のI-V特性は酸化(空気中770℃-15min)によりバリスタ電圧0.86V,α=6.3から、バリスタ電圧0.92V,α=6.0に変化し,更に還元(混合ガス(N_2:H_2=95:5中1398℃-2h)によって全くオーミックになる.またこれを再び酸化(O_2ガス中、1200℃-2h)するとバリスタ特性(バリスタ電圧2.77V,α=11.5)が再び出現した.このように不純物が偏析していない人工粒界試料でも酸化処理によってバリスタ電圧やα値が増加し還元処理によって可逆的に減少することがわかった.バリスタ電圧(V)は酸化処理温度が高くなるにつれて2次曲線的に増加し,700〜800℃で最も大きく変化した.α値は処理温度にかかわらずほとんど変化せず,一定であった。接合粒界試料のI-V特性は酸化処理前では完全な直線性を示し接合部分にはほとんど抵抗も生じていないが,この試料を酸化処理(酸化ガス中、1200℃-2h)するとI-V特性に非直線性がみられた. 3.人工粒界の温度特性 Ba_<0.9>Sr_<0.1>TiO_3(Tc〜50℃)単粒界試料のI-V特性の温度依存性を測定した結果,非直線性はキュリー温度付近がもっとも小さく,その前後で大きくなっていることがわかった.この結果は,粒界の障壁高さが,誘電率の増減に伴って変化することを示唆した. このような粒界の酸化還元処理による特性変化や温度特性は,焼結体試料を全体を測定する方法では真の粒界特性を明らかにすることは難しいが,本装置を用いて微小領域の特性を測定したり,単一粒界のモデル試料を用いることにより,粒界特性を明らかにすることができた.
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