研究概要 |
本研究は,耐熱性炭素繊維強化熱可塑性樹脂の粘弾性特性の解明を目的として,熱可塑性樹脂ポリイミド炭素繊維強化プラスチックのクリープ挙動の定量的定性的評価を試みた。使用した材料は,繊維容積混入率が0,3.5,7.6,15.6%の4種のCFRTPであり,クリープ試験の温度範囲は160℃から280℃までのとし,空気を媒体として,曲げ試験で行った。 未結晶状態の供試CFRTPのクリープ特性の研究 各混入率にまた各温度別にクリープコンプライアンス曲線を求めた。この各繊維混入率ごとのクリープコンプライアンス曲線群より,マスター曲線を作成し,その際のシフト量の特徴より材料が示すクリープ現象がアレニュウス型の線形粘弾性理論に従うことを明らかにした。さらに,新たに提案した2つの移動因子を用いることで,使用した材料全体について1本のクリープコンプライアンスのマスター曲線を表現し得ることを確認した。 結晶化ポリイミド系CFRTPのクリープ特性の研究 上記CFRTPの母材樹脂を重量割合14%と最大の31%まで結晶化を行い,結晶化がFRPのクリープ特性に及ぼす影響を検討した。結晶化度を変えた結果,12種の材料が得られ,それぞれについてマスター曲線の作成を試みた。その結果,結晶化した材料でも同一混入率ごとに一本のマスター曲線を描くことが可能であり,すべての材料においてアレニュウス型の温度-時間換算則が成立することを明らかにした。また結晶化がCFRTPの弾性率に与える影響はわずかであるものの,クリープ挙動に対しては繊維の混入効果と同様,粘弾性特性の発現を制約すること,言い替えれば著しく耐熱性を向上させることを明らかにした。繊維混入率と結晶化度のクリープ挙動への影響を統一して扱い得るかを検討したが,結晶化度14%の材料だけが特異な挙動を示したため困難と判断した。その理由として結晶化の発生場所が炭素繊維の存在で不均一化するためとの示唆を得た。
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