研究概要 |
粒子複合化は,高温材料の強度を高める最も確実で有効な方法である.本研究では,粒子強化材料の高温強度の向上を目的として研究を行い,次の成果を得た. 1.粒子強化材料の強度を担う析出粒子は,熱的に不安定で,その形態変化がクリープ挙動に大きな影響を及ぼす.この形態変化を念頭に置いて,次の非定常クリープ構成式を使って,粒子強化材料のクリープを解析した. ε=A{1-exp (-αt)}+B{(exp (-αt)-1} ε:ひずみ,t:時間 (1) この式は,クリープ挙動を特徴づける3つのパラメータA, Bとαを含む.これらのパラメータを使うと,粒子形態を含めた組織の変化を有効に評価でき,粒子強化材料の合金設計に関する有用な情報が得られる. 2.粒子強化材料は,押出し加工で長く伸びた結晶粒形状をとることが多い.このような結晶粒形状は,クリープ強度に大きな影響を及ぼす.結晶粒形状がクリープ強度に影響する機構を検討した結果,結晶粒界での変形の拘束と,粒界すべりによる拘束の緩和が,クリープ挙動を決める重要な因子であることが明らかになった.また,結晶粒界移動や結晶粒形状の変化が,3次クリープを支配する最も重要な因子である. 3.α_2相(Ti_3Al)とγ相(TiAl)からなる層状複合材料の,高温強度向上を目的とした組織設計についても検討した.その結果,結晶粒径を大きくすることと,高強度のγ相の体積比を増大させることが,高強度化に有効であり,層間隔の制御が高温材料では効果がないことがわかった. 4.材料の性能は,使用条件で評価しなければならない.しかし,時間依存型の変形をする高温材料では,その性能を,短時間試験結果を外挿して推定しなければならない.本研究では,この推定で誤差が導入される原因およびそれを防止する方法についても,新たな提案を行った.
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