研究概要 |
鉄の窒化物が超巨大な飽和磁束密度(以下,Bsと記す.)を有することが発見されて以来,これに関する基礎研究および実用化を目指した応用研究が活況を呈している.しかしながら,現在のところ,Bsが3Tと超巨大な飽和磁束密度を有する準安定化合物質のFe_<16>N_2はスッパタ-法,イオン窒化法,イオン注入法による作製が試みられているにすぎない.この準安定化合物Fe_<16>N_2を粉末状態で得ることが出来れば,その用途は飛躍的に拡大するだろうことが予想される.粉末状態で準安定物質を得る方法にメカニカルアロイング法(以下,MA法と記す.)がある.筆者らはFe粉末中に化学的に結合した酸素あるいは表面に物理的に吸着している酸素がMA時の窒化反応に大きく影響すると考え,鉄粉の種類による違いを検討するにあたり水素還元による鉄粉の清浄化を十分に行い,窒化反応に及ぼす影響について検討した.なお,MA中での雰囲気に関しては,N_2の他,NH_3をも試した.特にMA時間を短くして酸化を極力防ぐため,NH_3圧力を最大8気圧(室温では8気圧以上にすると液体となる.)とした場合についても検討した.その結果,高NH_3中でのMA処理は試料の窒化に非常に効果的であり,室温でのFeへの窒素の固溶度は0.4at%であるのに対し,Fe_<16>N_2生成に必要な11.1at%以上の窒素を固溶させうることが確かめられた.現在これをFe_<16>N_2にする熱処理方法を検討中である.筆者らはこのFe_<16>N_2をソフト材料として使用し,ハード材料としては,現在最強のNdFeBより優れていると言われているSm_2Fe_<17>N_xを用いたナノコンポジットの硬・軟複合磁石の作製を目指している.その際問題となるMA法によるSm_2Fe_<17>N_xの作製,特に窒化方法にもこの方法を応用できる可能性がある.この問題に関しても,上記のFe_<16>N_2と同様検討していきたい.
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