研究概要 |
部分安定化ジルコニアに少量のアルミナを混合した粉末を用い,1673〜1973Kで焼結し,熱膨張測定,X線回折,電子顕微鏡観察,3点曲げ試験などを行い,粒界に生成した偏析相と,正方晶→単斜晶相変態ならびに機械的性質の関係を調べ,以下の結果をえた。 (1)アルミナを含むZrO_2-3mol% Y_2O_3の粒界には,アルミナ,シリカ,ジルコニアなどに含む非晶質相の生成を認めた。その粒界相は粒界3重点に多く観察されたが,粒界面にも生成しており,その厚さは焼結温度の上昇とともに増加した。 (2)アルミナ添加により,正方晶から単斜晶へのマルテンサイト変態は抑制された。また,算温時効に伴う変態速度はアルミナ添加により遅延した。速度論的検討から,アルミナ添加によりマルテンサイトラスの核生成速度が著しく抑制されたが,その成長段階にはアルミナ添加の影響は認められなかった。 (3)破壊強度および破壊靱性値は,アルミナ添加で向上した。 (4)変態速度の減少や機械的性質の向上は,アルミナ添加による粒径や密度の変化によるのでなく,(1)の粒界相生成に基づく結果であることが判明した。粒界相形成により,正方晶→単斜晶相変態による膨張を抑制するためであることが,諸結果から明らかになった。 (5)今後は,アルミナ添加で部分安定化ジルコニアの焼結性を追求する必要がある。
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