研究概要 |
試料として純鉄、SUS304,チタンを選び,窒素,水素,アセチレンなどを反応ガスとして,低圧下で形成させた高周波誘導プラズマ中で,試料に直流のバイアス電圧を印加しつつ窒化・滲炭を行い,バイアス電圧の有無,電圧値の大小と正負の方向,基板温度等が反応過程に及ぼす影響を調べた。 厚さ1mmの純鉄試料につき,全圧240mtorrのN_2-H_2(90:10)混合ガスを用いて発生させた高周波(4MHz)誘導プラズマ中で,温度(試料)550℃で120min処理した。このときバイアス電圧を印加しないと窒素の拡散層の厚さは約300μmに達するものの,鉄表面近傍には約20μm程度の脱窒化層が現れ,窒化鉄(γ′相)は生成せず,プラズマ中の水素ラジカルの存在によると推定された。しかし-200Vのバイアスを印加すると窒素の拡散層は約200μm程度に減少するが,25μm程度の窒化鉄層が出現し,水素ラジカルの脱窒素作用を負バイアス印加による窒素イオンの表面への引込み作用が上回ることが認められた。SUS304の窒化では,負バイアス印加による表面硬度の上昇は極めて顕著であった。 チタンの窒化・滲炭については,すでに前年までに負バイアス電圧印加による顕著な促進効果を確認した。今回ははるかに高密度(〜8×10^<13>/cm^3に達する)の高周波(13.56MHz)誘導プラズマを利用した。厚さ0.8mmのチタン試料につき,全圧8-60mtorr,窒素・水素プラズマ(H_2:0〜7sccm,N_2:18〜70sccm)への入力:70Wと350W,時間:120min,基板温度:300〜600℃の条件で処理を行った。しかし窒化は進行せず,これに通常の高周波(4MHz)誘導プラズマを複合させ同時に負バイアスを印加すると初めて窒化が進行した。窒化反応に関与するラジカル種が十分存在すると,加速イオンの効果が顕著に現れる。
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