研究概要 |
鉄等の強磁性材料に磁場をかけそれを変化させて,ピックアップコイルにより磁化あるいは磁束密度の変化を調べたとき、磁壁の移動に伴った不連続な磁化のとびにより発生する雑音(バルクハウゼンノイズと呼ばれる)が材料中の欠陥等に敏感であるため、材質を非破壊評価する方法として近年注目されている。本研究では損傷度のよく分かっている水素脆化した試料を反磁場が無視できるような薄い試料片に加工して用い、試料中の磁場が一様になるようにして、バルクハウゼンノイズを計測しそのパラメータとミクロな材質の変化に本当に関係があるかどうかを明らかにすることを目的とした。 今年度クロムモリブデン鋼で、系統的にその処女材を温度500℃(773K)において150kgf/cm^2の水素の圧力下で,5時間,20時間および300時間水素浸食させた試料板を作成した。板の厚さを磁場をかけたときに反磁場が無視できて試料中の磁場が一様となるよう0.2mmの厚さに成形した。それらの試料板に対し、新しい方法でバルクハウゼンノイズを観測し、ノイズ電圧のRMS値、絶対値や、ノイズ信号をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルを調べ比較検討した。水素浸食とともにノイズは最初少し増加しそのあとやや減少する傾向が観測された。薄い板状の試料の厚さを変えた場合や,かける磁場の方向を変えた場合の角度依存性を調べる実験も行ない,バルクハウゼンノイズは実験条件に非常に敏感であることを見いだした。
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