研究概要 |
本研究では,溶湯処理プロセスにおける超音波外力の効率的利用を目的として,まず,液中超音波の音場測定と音場解析を行った.次に定在音場での液中熱対流制御実験,液中分散粒子の凝集分離実験,および,繊維強化型複合材料中の強化繊維の配向モデル実験を行った.得られた知見は次の通りである. 1.特性曲線法による1次元音場の数値解析法を開発した.解析解および実験結果との比較により,この解析手法の妥当性を確認した.この解析手法により,定在音場の形成における音波伝播の非定常過程が解析可能となった.2.波動方程式の差分解による2次元音場の数値解析手法を開発した.2次元音場では超音波の照射方向ばかりでなく,それに垂直な方向の波動成分が発生して複雑な音場を形成するが,この解析手法により,容器の形状と物性,液深と液物性,振動子の周波数と配置を考慮に入れることのできる音場設計の基本ツールを得た.この解析手法により解析した音場は,実測した音場と特に音場形成の初期過程で良く一致した.3.超音波の定在液を利用した対流制御技術について検討した.水系での実験から,加熱された流体塊は音圧の節に拘束されること,また,流体塊に作用する浮力以外の主要な力は,エネルギー密度が小さい場合には放射圧,大きい場合には時間平均の音圧勾配に基づく体積力と判断された.4.液体中に超音波の平面定在音場を共振条件下で形成させ,分散粒子を節の位置に平面状に凝集させ得ること,また,その際の音場設計が理論的にも可能なことを示した.5.液中の定在超音波を利用して複合材料内の強化繊維を特定方向に配向させる新規技術を提案し,そのメカニズムについて検討した.
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