磁場の水に対する影響を分子コンフォメーションの異なる蛍光プローブを用いた蛍光強度変化で検討したところ、以下の結果が得られた。 1.磁場照射後、蛍光強度は増加した。 2.炭素鎖の長いプローブには磁場効果があり、炭素鎖のないプローブでは磁場効果は認められなかった。 3.磁場効果は磁場照射後、20分過ぎから現われ始めた。 4.アルコール混合系では、アルコール濃度が増加すると磁場効果が減少した。 蛍光プローブは、ベンゼン環の集合体であり、そこから蛍光を発する。炭素鎖を有する蛍光プローブでは、その炭素鎖は蛍光に関与しない。一般に、炭素鎖等の疎水性の周囲の水は、バルク水に比べ構造化していると言われている。2の結果より、磁場の影響は炭素鎖周囲の水にあることから、磁場によって、構造化している炭素鎖周囲の水が、さらにその構造を強めるものと考える。これは、これまでの本研究室での微粒子を用いた磁場の研究からの考察とほぼ一致する。ただ両者の間には、磁場が効き始めるまでの時間や磁場効果が持続する時間(メモリー効果)に違いがある。これは、蛍光プローブと微粒子の運動性の違い、つまり、それらの周囲の水の運動性の違いにより、磁場効果に強弱があるものと考える。しかし、基本的には両者に対する磁場効果は同じである。 膜透過性に対する磁場効果の研究では、リン脂質を用いた擬似生体膜であるリポソームの調製と、膜透過特性の実験を行なったが、磁場効果については確認されなかった。
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