研究概要 |
シリカゲルにおける種々の気体の吸着相互作用をスーパー分子計算により検討した.吸着構造,吸着熱,吸着サイトの同定,吸着構造と吸着特性の関係,多分子層吸着の発現に関して理論的検討を加え,吸着剤の表面設計の指針を得た。 1.気相吸着平衡データベースの構築 シリカゲルにおいて,炭化水素,無機ガス,アルコール類,芳香族化合物の気相吸着平衡を定容法吸着装置と流通法吸着装置を用いて測定し,Clausius-Clapeyron式により吸着熱データベースを作成した。 2.シリカゲルと吸着分子のスーパー分子計算 非経験的分子軌道プログラムGAUSSIAN90,92を使用し,Hartree-Fockレベル(基底関数6-31G^<**>)で孤立シラノール基,二対(ビシナル型)シラノール基,シロキサン基の構造最適化を行い,吸着サイトをモデル化した。次に,エチレン,ベンゼン,二酸化硫黄,水,アンモニア,アルコール類,アニリンなどの吸着構造と吸着熱を理論的に求めた。なお,エネルギー計算においては,MP2レベルまで計算精度を上げ,電子相関をも考慮した。スーパー分子計算によって得られた吸着熱は実験結果と良好な一致が得られた。シロキサン基は吸着サイトとならず,π電子や非共有電子が広がっている化合物に対しては孤立シラノール基よりも二対シラノール基が吸着サイトとして適することが分かった。また,吸着質分子と吸着サイトに吸着した分子の相互作用エネルギーを計算することによって多分子層吸着の発現に理論的検討を加えた。 3.シリカゲル表面設計指針 ある物質の吸着に望ましいシリカゲル表面上の吸着サイトの種類と集合状態をスーパー分子計算により予測でき,シリカゲル表面設計に関する有益な指針が得られた。
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